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木でできた海 [海外ファンタジー]

タイトル    木でできた海
作者     ジョナサン・キャロル


(あらすじとデータ)

かつて手に負えない不良だったフラニーは、
いまは故郷で警察署長になっていた。
現在の自分に満足する彼は、
家族を愛する心温かい男だ。

保護した老犬を看取り、埋葬してやったはずが、
犬は生き返り、彼のもとに帰ってきた。
喧嘩ばかりしていた夫婦は失踪し、少女の死体は言葉をしゃべる。
それら、奇妙な出来事のまわりに符合のように現れる奇妙な羽。

しかし、すべてはまだ始まったばかりだったのだ。


「蜂の巣にキス」「薪の結婚」に続く、クレインズ・ヴュー三部作の三作目。


(私はこう読んだ)

ジョナサン・キャロルの作品を読むと、
いつも、もの凄く上手い歌い手が、鼻歌を歌っているのを連想します。
軽やかで、
力みがなく、
無意識に出てきてる物語、みたいな。

キャロルが本当に鼻歌まじりに書いているとは
決して思わない(だったら、もっとたくさん数を書いているだろうし、
こんなに仕上がりがキッチリしているわけもない)けれど、
この鼻歌感は大事なところで、
読み手に心地好いミスデレクションを与えてくれる、
キャロル独特の味になっているように思います。

本書は、宇宙人も出てくるSFで、
タイムパラドックスも扱っているわりには、
キャロル節ともいうべき鼻歌感のおかげで、あんまりSFっぽくはなく、
気がつくと、人生讃歌の物語なのであって、
死んだ父親と握手なんかして、
(相変わらず父ちゃんがスキなんだなあ、とか)
ウッカリ泣かされたりもするのです。

若干のネタバレをしてしまうと、
時間軸の違う自分と接触する話で、
自分自身と対面するなんて、考えただけでゾッとするので、
ホラーだわ、と単純に思うのだけれど、
読もうと思えば、心理学的に自己受容の物語にも読め、
神学的にも、小難しく読もうと思えば、いくらでも難しく読めますが。
キャロルの読み方は、たぶん、ふわっとしてスパイスの効いたスフレを
食べるようであっていいんだろう、と思ってます。

本書はこれまでの作品と比べると、
勢いは劣るものの、
分かりやすく統合されているので、
これはこれでアリかな、と思いますし、
ネタの可愛らしさは健在で、満足しました。


木でできた海 (創元推理文庫)

木でできた海 (創元推理文庫)




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